発信者情報開示で判明するのは「投稿者本人」とは限らない~回線契約者と実際の投稿者が異なるケース

東京弁護士会所属の弁護士宮川舞が、発信者情報開示請求の実務経験を踏まえ、開示された回線契約者と実際の投稿者が異なるケースについて説明します。

IPアドレスルートの発信者情報開示請求では、SNS等を運営するコンテンツプロバイダからIPアドレスとタイムスタンプの開示を受けた後、アクセスプロバイダに対し、発信者の氏名・住所等について発信者情報開示命令申立てを行います。
もっとも、この手続によって開示された人物が、問題となる投稿を実際に行った本人であるとは限りません。

1 開示されるのは、原則として通信回線の契約者等の情報

アクセスプロバイダは、開示されたIPアドレスとタイムスタンプ等をもとに、その日時に当該IPアドレスを割り当てていた通信回線を調査し、その回線の契約者又は管理者の氏名・住所等を開示します。
そのため、発信者情報開示によって判明するのは、基本的には「問題となる投稿に使用された通信回線の契約者等」です。アクセスプロバイダが、投稿に使用された端末を誰が操作していたかまで確認しているわけではありません。

2 回線契約者と実際の投稿者が異なることがある

自宅のインターネット回線を家族で共用している場合、回線の契約者と投稿者が異なり、実際に投稿したのは契約者の配偶者や子等であるということがあります。会社名義の回線であれば、契約者である会社と、実際に投稿した従業員が異なるケースも考えられます。
詳細は伏せますが、私が実際に取り扱った事件でも、問題となった投稿だけでなく当該アカウントの他の投稿内容も踏まえると、開示によって判明した回線契約者は親であり、実際に投稿したのはその子である可能性が高いと考えられる事案がありました。
このように、回線契約者の氏名・住所が開示されたからといって、その人物が投稿者であると直ちに断定することはできません。

3 開示後も、実際の投稿者を検討する必要がある

回線契約者と実際の投稿者が異なる可能性がある場合には、アカウントの過去の投稿内容、投稿された時間帯、投稿者しか知り得ない事情、アカウントの利用状況等を確認し、誰が投稿したのかを検討する必要があります。
そのうえで、開示された回線契約者に対して事実関係を確認する、実際の投稿者に関する説明を求めるなど、事案に応じた対応を考えることになります。
発信者情報開示請求は、氏名・住所が開示されれば必ず投稿者本人の特定が完了する、とは限りません。開示後にどのような調査や請求を行うかについても、具体的な事情を踏まえて判断する必要があります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントを残す

目次