
インターネットやSNSの普及により、個人法人を問わず、誰もが名誉毀損、風評被害、営業妨害等の被害者となる時代になっています。
言われた方にも問題がある? そんなことはありません。たたかれるのが嫌ならSNSに向いていないからやめるべき? 被害者が泣き寝入りするのはおかしな話です。
名誉毀損訴訟を多く経験してきた弁護士(宮川舞、東京弁護士会所属)が、これまでの日常や事業活動を取り戻すお手伝いをいたします。
ネット上の誹謗中傷、風評被害、営業妨害等でお悩みの方、対応をお考えの方は、後述の「誹謗中傷って何?」「ネット上の誹謗中傷等への具体的な対応方法(概要)」をご一読いただいた上で、お気軽に、以下のご相談フォームから、法律相談についてお問い合わせ・ご相談ください。 ご相談フォームからのお問い合わせ等が難しい場合は、電話での法律相談についてのお問い合わせも可能です。
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誹謗中傷って何?
誹謗中傷とは、他人への悪口や嘘を広める、嫌がらせをする等を含む、いわゆる言葉の暴力です。
法律上、誹謗中傷という行為そのものではなく、誹謗中傷行為による「権利侵害」や「業務妨害」等が違法と判断されたり、罪に問われることになります。
誹謗中傷で害される権利としては、「名誉権」(個人や企業の社会的な評価)、「名誉感情」(個人が自分自身に対して持つ主観的な評価)、「営業権」(個人事業主や法人の営業の自由)が挙げられます。その他、誹謗中傷の一環で自身のプライベートな事柄や写真が公開された場合には、「プライバシー権」や「肖像権」の侵害が問題となります。
ネット上の誹謗中傷等への具体的な対応方法(概要)
ネット上の誹謗中傷等への具体的な対応を、一読しやすいようできるだけコンパクトにまとめました(詳細については随時コラムで追加していきますので、ご興味がある方は参照ください)。
1 削除請求
1-1 削除請求って何?
削除請求とは、該当サイトの管理人に対してネット上に掲載された投稿等の情報報削を請求することです。削除請求が認められるためには、その対象が権利を侵害する投稿等(違法な投稿等)であることが必要です。その対象が違法な投稿等となるかどうかは、法律上の要件に基づき判断することになります。「腹が立つ投稿等=権利を侵害する(違法な)投稿等」とは限らないため、注意が必要です。
1-2 削除請求の方法
削除請求には、該当サイトの管理者に対して任意の削除請求をする方法と、裁判所の手続を通じて該当サイトの管理者に対して法的に削除請求をする方法があります。明白な権利侵害の場合は、任意の削除請求が認められやすいですが(例:自らが公表していない自宅住所を第三者により投稿された場合等は、明白なプライバシー権侵害となります)、名誉毀損等の権利侵害になるかという点につき法的な評価・判断が伴うケースですと、任意の削除請求が期待できないことがあります。
任意の削除請求が期待できないケースでは、裁判所の手続を通じて該当サイトの管理者に対する法的な削除請求をします。法的な削除請求手続として、仮処分申立てを行います。
2 発信者情報開示請求
2-1 発信者情報開示請求って何?
通称プロバイダ責任制限法に基づく、ネットでの投稿者(発信者)を特定するための手続です。削除請求の場合と同じく、その対象が権利を侵害する投稿等(違法な投稿等)であることが必要です。SNSや電子掲示板等、不特定の人が受信する(閲覧する)通信で権利侵害をされた場合に、この請求をすることができます。メールやDMで権利侵害をされた場合には「特定の人だけが受信する通信」であるため、この手続を使うことはできません。
任意の発信者情報開示請求をしても開示が期待できないケースが多いため、裁判所の手続を使った発信者情報開示請求が必要となることが多いです。発信者情報開示請求を早期に進めるための新しい法的手続として、「発信者情報開示命令制度」が2022年10月1日から始まりました。
2-2 発信者情報開示請求の方法
発信者情報開示請求の方法には、任意での発信者情報開示請求と、裁判所の手続を通じた法的な発信者情報開示請求がありますが、任意での発信者情報開示はあまり期待できないため、基本的に、裁判所の手続を通じて請求することになります。
実名登録の投稿サイトの場合、該当サイトの管理者に対し、投稿者の住所氏名等について、発信者情報開示命令申立を行います。
匿名での投稿サイトやSNSの場合、手続が増えます。以下は一般的な流れです。
①該当サイトの管理者に対して、投稿者の特定に必要となるIPアドレス、タイムスタンプ、アカウント情報等について、発信者情報開示命令申立や仮処分申立を行います(サイト管理者は、通常、投稿者を直接特定するための住所氏名等の情報を保有していないため、サイト管理者に対して、「投稿者を特定する材料となる情報」の開示を請求します)。
②サイト管理者から開示されたIPアドレスを調査し、どこの接続プロバイダが管理するものかを調べます(必要に応じてログ保存手続も行います)。
③接続プロバイダに対し、投稿者の住所氏名等について、発信者情報開示命令申立を行います。
(注:上記①で発信者情報開示命令申立と共に「提供命令申立」を行った場合には、②以下の手続が変わります。しかし、現状、該当サイトの管理者が提供命令に素早く対応してくれるとは限らないため、ここでは、提供命令申立をするパターンは割愛します。)
接続プロバイダは契約者に対してインターネットへのアクセスの都度IPアドレスを付与しますが、この履歴(ログ)を保存する期間を定めており、大体保存期間は3~6か月です。ログは投稿者を特定するのに必要な情報となるため、ログ保存期間経過によりログがなくなってしまうと、上記の開示請求手続をしても、接続プロバイダから投稿者の情報開示を受けることができなくなります。そのため、発信者情報開示請求手続はできるだけ早期に行う必要があります。
3 損害賠償請求
3-1 損害賠償請求って何?
ネット上の投稿が名誉毀損・侮辱(名誉感情侵害)・プライバシー権侵害・肖像権侵害・営業権侵害等として不法行為に該当する場合、投稿者は、被害者に対し、民法709条、710条に基づき損害賠償義務を負うことになります。一般的に、名誉毀損等に基づく損害賠償請求において賠償が認められるのは、慰謝料(被害者が名誉毀損等によって受けた精神的損害に対する賠償)です。法人であっても、ネット上の投稿が名誉毀損等の不法行為に該当する場合、個人の慰謝料と同じように、損害(無形損害)が認められます。その他に認められるものとしては、調査費用(発信者の特定にかかった費用)、弁護士費用というのが一般的です。ただし、請求したものが全て認められるとは限らないので、この点注意が必要です(なお、裁判で賠償が認められる弁護士費用とは、実際に弁護士に支払った費用のことではなく、裁判で認められた慰謝料額の1割相当の金額を指します)。
3-2 損害賠償請求の方法
損害賠償請求の方法は、交渉で任意の賠償を請求する方法と、損害賠償請求訴訟をする方法があります。交渉を先行する義務はないため、交渉をせず訴訟をすることも可能です。損害賠償請求訴訟の場合、請求額に応じて担当する裁判所が変わります(請求額が140万円以下の場合は簡易裁判所、請求額が140万円を超える場合は地方裁判所となります)。
4 告訴等
民事上の名誉毀損は、刑事上、名誉毀損罪(刑法230条)・侮辱罪(刑法231条)・信用毀損罪(刑法233条)が成立する可能性があります。また、民事上の営業権侵害は、刑事上、偽計業務妨害(刑法233条)・威力業務妨害(刑法234条)等が成立する可能性があります。民事責任だけでなく刑事責任も追及したいと希望する場合、被害届を出したり、告訴をしたりことが考えられます。
告訴とは、犯罪の被害者等が捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯罪者の処罰を求める意思表示のことをいいます。被害届は、犯罪被害を捜査機関に報告するものであり、告訴と被害届は別のものです。
名誉毀損罪・侮辱罪は親告罪ですが、親告罪の場合、被害届が出ているだけでは加害者を起訴することはできず、起訴するためには告訴が行われる必要があります。また、法律上、告訴をすることができる期間は「犯人を知ったときから6か月以内」と定められているため、注意が必要です。
5 社内における処分
自社への誹謗中傷をしていた投稿者を発信者情報開示請求で特定した結果、自社の従業員だった、ということがあり得ます。この場合、懲戒処分を検討することになりますが、その投稿内容が一定の要件を満たす場合(名誉毀損の違法性阻却事由である、①公益目的があること、②公共利害事項であること、③投稿内容が真実であるか又は真実であると信じる相当の理由があること、のすべてを満たす場合)には、懲戒処分を行うことはできないため、注意が必要です。また、懲戒処分を行うことができるケースであっても、投稿内容や態様に照らして合理的といえる懲戒処分内容とする必要があります(過度に重い懲戒処分とした場合、無効を主張され、裁判で無効と判断される可能性があります)。