名誉毀損と名誉感情侵害の違い

ネットの誹謗中傷が問題になる場面で、「名誉毀損」「名誉感情侵害」(侮辱)という言葉をよく目にしますよね。
ともに「名誉」という言葉が使われており似たもののように感じるかもしれませんが、別のものです。
名誉毀損と名誉感情侵害、この2つの違いを、主な違いを中心に簡潔に説明します。

1 侵害される権利・利益が違う

(1)名誉毀損は、特定の人や法人の社会的評価を低下させる場合に成立します。
「社会的評価」とは、人や法人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価のことをいい、他者(社会)が自分(自社)に対して有している評価になります。
個人だけでなく法人も社会的評価を有しているため、法人に対する名誉毀損も成立します。
名誉毀損の例:「●●(会社名)では毎日17時から20時まで強制的にサービス残業」といった投稿

(2)名誉感情侵害は、特定の人の「人が自分自身の人格的価値について有する主観的な評価」を侵害する場合に成立します。
名誉毀損の場合と違い、自分が自分自身に対して有している評価になります。
法人は主観的評価を有していないため、法人に対する名誉感情侵害は成立しません。
名誉感情侵害の例:「ブスな上に人間としてクズ」といった投稿

2 違法な権利侵害となる要件が違う

(1)削除請求、発信者情報開示請求、損害賠償請求等の請求が裁判所で認められるためには、違法な権利侵害であることが必要です。
名誉毀損の場合、問題とされる表現によって特定の人や法人の社会的評価が低下すれば名誉毀損にはなりますが、それでゴールというわけではありません。
問題とされる表現が読んだ人に伝える内容(以下「伝達内容」といいます)が以下の全ての条件を満たした場合には、名誉毀損にはなっても、違法な権利侵害とはならないのです。
①伝達内容が、公共の利害に関する事実に関するものであること
②伝達の目的が、もっぱら公益を図る目的であること
③伝達内容が事実である場合には、その事実が真実であること又はその事実が真実であると信じるについて相当の理由があること(伝達内容が意見論評である場合には、意見論評の前提としている事実が重要な部分において真実であること又はその事実が真実であると信じるについて相当の理由があること。加えて、伝達内容が意見論評である場合には、表現方法が人身攻撃に及ぶといった意見論評の域を逸脱したものでないこと、という要件も加わります)

(2)名誉感情侵害の場合、問題とされる表現が違法な権利侵害となるための要件はシンプルです。
表現態様が著しく下品ないし侮辱的である等、「社会通念上許容される限度を超える侮辱行為であると認められる場合」には、違法な権利侵害となります。
シンプルであるからこそ、どのレベルだと社会通念上許容される限度を超えることになるの?という疑問が出てくるわけですが、言葉自体が強い攻撃性を有するケースや、侮辱的表現が繰り返し行われているケース等では、名誉感情侵害が認められやすい傾向にあります。

3 その他の違い

その他の違いとしては、名誉毀損の場合は、問題となる表現が「公然と」(不特定又は多数に対して)される必要がありますが、名誉感情侵害の場合はこの要件は必ず必要というわけではありません。
また、謝罪広告等の名誉回復措置(民法723条)が認められるのは名誉毀損の場合のみとなります。




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