プライバシー権は、「私生活上の事実をみだりに公表されない権利」です。「みだりに」は法律の世界でよく使われる用語で、正当な理由なく、という意味です。
ネットの誹謗中傷には、名誉毀損、名誉感情侵害だけでなく、プライバシー権侵害のケースもあります。プライバシー及びプライバシー権侵害の基本を押さえておきましょう。
1 事実だけでなく、事実らしく受けとられる事柄もプライバシーとして保護される
プライバシーとは、他人にみだりに知られたくない私生活上の事実を指します(法律上の定義や最高裁による明確な定義はありませんが、こう理解してよいと思います)。
プライバシーは、基本、私生活上の「事実」であることが前提となります。でも、ネット上では、ある人について、私生活上の事実(=真実)でなくても、私生活上の事実らしく世間に受け取られそうな事柄が揶揄目的等で投稿されることがあります(例えば、事実でないのに、「ある人が不倫をしている」とか、「ある人が過去に特定の病気にかかっていた」といった内容が投稿される等)。
本当のことでなくても、本当のことらしく世間に受け取られそうな私生活上の事柄が広まったら、心理的には非常に負担になりますし、傷つきますよね。
私生活上の事実(=真実)でないとプライバシーとして保護されないのか、というと、そうではありません。
私生活上の事実でなくても、私生活上の事実らしく世間に受け取られるおそれのある事柄も、プライバシーとして保護の対象となります。
2 どんな場合にプライバシー権侵害となるの?
プライバシーを無断で公表されたら常にプライバシー権侵害になるか、というと、そうではありません。
①「私生活上の事実を公表されない法的利益」と②「私生活上の事実を公表する理由」の2つを比較衡量して、①が②に優越する場合に、プライバシー権侵害となります(比較衡量は、裁判でよく用いられる判断手法です。対立する当事者の権利や利益を天秤にかけて、どちらが優越するか(重要か)を判断する手法です)。
上記の比較衡量をする際には、複数の要素が検討されます(公表対象者の社会的地位、公表対象者が受ける具体的被害の程度、公表の目的や意義、等)。
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